今回はリスニングの効果的なトレーニング方法についてご紹介したいと思います。
みなさんはリスニング力を鍛えるためにどんなトレーニングをしていますか。洋画をみる?それとも「聞くだけ系」の教材でひたすら耳にインプット?それとも…特に何もしていない!?
いろいろな方法があるかと思いますが、「シャドーイング」という言葉を聞いたことはありますか?シャドーイングは英文を聞き終えてから繰り返すのではなく、聞こえてくる英文をすぐ1、2語あとから影のように追いかけていくトレーニングです。
そしてそのトレーニングは、プロの同時通訳の方もやっている基本のトレーニングで、耳と口との連携によってリスニングとスピーキングに驚くほどの効果をもたらしてくれます。また初心者ほどその効果が現れやすいと研究で証明されています。
この記事では、なぜシャードーイングというトレーニング方法がいいのかをわかりやすく解説し、シャドーイングの正しいやり方を紹介しています。
そして最後には、実際に読者のみなさんにシャドーイングを体験してもらい、リスニングとスピーキングの効果を実感していただけたらと思います。
もし、そこはもう分かっているからとりあえずやり方だけ知りたいという方は、目次からそこまでスキップしてくださいね。
ではみていきましょう。
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リスニング力UPに必要な4つのスキルは【発音・語彙・文法・速さ】
まずリスニングを鍛えるためには何が必要なのかを改めて確認しておきたいと思います。
それは、
- 発音をよくする
- 語彙を増やす
- 文法を理解する
- 速さに慣れる
の4つです。これらはどれか一つだけ集中的にやり続けるのではなく、どれも並行してやっていくことが大切です。
まず発音ですが、英語と日本語の発音はもともと大きく違います。一つ一つの音が違うのはもちろんのこと、つながる音や変化する音、英語特有のイントネーションにも注意しなければいけません。その違いを認識して、自分の日本語寄りの発音を英語らしい発音に近づけていくトレーニングが必要です。
次に語彙ですが、単語の意味が分かっていないと何を言っているのか分からないのは当然のことです。会話の流れからなんとなく意味を推測することもできますが、もちろん分かったことに越したことはありません。けれども大学受験のような難しい単語を覚える必要はありません。大切なのは、自分が普段使えそうと思う名詞や動詞を重点的に増やしていくことです。

スーパーとか銀行とか家の中とか、知らない単語がいっぱいありそうね。
続いて文法ですが、日常会話は中学英語で学ぶ文法が分かっていれば十分間に合います。私たちはネイティブでも論文を書く学者でもありません。中学までの文法さえしっかり理解していれば日常会話でとりあえず困ることはないので、もし中学で習った文法があやふやなのあれば見直しをおすすめします。遠い記憶を引っ張り出してみましょう。
最後に速さですが、これは当然耳を鍛えていく必要があります。これに直接役立つのが今回ご紹介するシャドーイングというトレーニング方法です。ただ、間違った方法でシャドーイングをしても意味がなく、むしろ逆効果になってしまいます。正しい方法でトレーニングすれば、速さだけでなく、発音、語彙、文法にも想像以上の効果をもたらしてくれるのです。
初心者にシャドーイングがなぜいいのか?それは耳と口の両方を鍛えてくれるから!

シャドイングは初心者ほど効果が現れやすいというデータがあるんです。
ここである実験をご紹介しますね。
この実験では、アメリカ高校留学などで言語能力を判断する際に使用するSLEPというテストを、3つのグループにpre(ビフォアー)とpost(アフター)の2回に分けて受けてもらいました。グラフ下の上位群とは英語が一番できるグループで、まあまあが中位群、その次が下位群、つまり初心者になります。そして、それぞれのグループをさらにシャドーイングを実践した人たち(青い線)と、そうでない人たち(赤い線)に分けています。

玉井 健 (神戸市外国語大学)
この実験からわかることは、一番点数が伸びたのは下位群のグループで、さらにそれはシャドーイングのトレーニングをしたグループの方でした。

このことから、シャドーイングというトレーニングは、とくに初級者に効果的であるということがわかりますね。
シャドーイングがどうしてこんなにもリスニング力を伸ばしてくれたのでしょう?
それは、シャドーイングとは聞くのはもちろんのこと、自分の口も同じスピードで動かしていかないといけないトレーニングだからです。自分で言えない英語は聞いても分からないように、耳と口は深く関わっています。集中力をもって耳を鍛え、同時に口も鍛え上げることによってリスニングが大きく伸びるのです。そして鍛え方が比較的足りていない初級者は、その効果が現れやすいということですね。
初心者に最適!シャドーイングは6つのステップで順序よく

まずは音源付きの教材とイヤホン(ヘッドホン)を用意してください。教材は難しすぎず、内容の80%が理解できるものがちょうどいいと言われています。
また実生活に沿った内容のものがおすすめです。SFものや専門的な用語が出てくるものは避けましょう。また、一文の長さが長いほど難しくなります。
シャドーイングは正しいやり方でトレーニングをしなければ意味がありません。以下は筆者が実際にやっていたトレーニング方法です。
step 1 音声だけで聞いてみる
まずは教材を閉じておきます。そして音声だけ聞いてみましょう。このときなるべく意味に集中します。意味のまとまりを意識し、これ以上聞いても分からない!というところまで聞いてみましょう。聞いてるあいだにメモを取る必要はありません。
step 2 スクリプトを見て聞いてみる
では教材を開けてください。次はスクリプトを見ながら聞いてみましょう。このときstep 1で分からなかったところに線を引くなり何か印をしておいて下さい。
見ても意味が分からない場合は、ひょっとすると教材が難しすぎるのかもしれません。分からない語句や文法が2割ぐらいなら調べても問題ありません。それ以上多い場合は思い切って教材を変えてみることをおすすめします。
大切なのは、この段階で文の意味を100%理解しておくことで、文法や単語の意味調べに時間を取られてはいけないということです。
step 3 スクリプトを見て音読をする
教材は開けたままです。文の意味が理解できたところで次は音読をしてみましょう。
ここでの音読とは、音源を聞いた後にリピートすることです。教材を見ながら一文聞いたら一度止め、同じように繰り返して言ってみましょう。このとき、英語の語順どうりに意味を理解しながら音読するようにしてください。スピードは無視してもいいので、丁寧にリピートしてみましょう。
何度かリピートをしてみて余裕が出てきたら発音にも注意してみてください。つながって聞こえるところ、強く言うところ、弱くて聞こえにくいところを忠実に再現するようにし、これを何度か繰り返します。
step 4 スクリプトを見てシャドーイングをする

ここでも教材は開けたままです。いよいよシャドーイングをします。シャドーイングは音声を聞きながら1、2語遅れて追いかけるように声に出していきます。耳を集中させ、目線で英文を追いかけながら声に出しましょう。イメージとしては次のようになります。
例えばAが音声、Bはあなたです。
A:Can you tell me how to get to the station?
B : ……………Can you tell me how to get to the station?
Aの“Can you tell”ぐらいまで聞こえたらBが追いかけていきます。何度かシャドーイングをしたあとは、先ほどと同じように発音にも注意して何度かやってみましょう。
step 5 音声だけで音読をする
ここで教材を閉じます。そして最初のピリオドまでの文を聞いて見ましょう。そしてまっすぐ顔を上げリピートします。先ほど忠実に再現した通りにやってみましょう。これも何度か繰り返してください。
step 6 音声だけでシャドーイングをする
いよいよ最後の仕上げです。教材は閉じたまま、音声だけを頼りにシャドーイングをしてみましょう。ここまで意味の理解を意識しながらトレーニングをしていますので、あとは何度もシャドーイングを繰り返すだけで大丈夫です。
耳よりも話すことに集中します。スピードも同じ速さになるくらいになるまで何度もやってみましょう。また目の前に相手がいると想像して気持ちを込めて言うことも大切です。根気と集中力がいりますが、シャドーイングはやればやるだけ力がつくのです。
このようにシャドーイングは英語の定型文を覚えるのにも効果的な方法なのです。
実際にシャドーイングをやってみよう!
持っている教材があればいいですが、特に手元にないという場合は、NHKラジオ基礎英語シリーズがおすすめです。1〜3のレベル別になっているので自分のレベルに合わせて選んでください。
音源はCD付きのものならそれを使い、スマホやパソコンでもできる「語学プレーヤー」という専用音声アプリで購入することもできます。
なるべくお金をかけたくないという人は、英語字幕付きの映画やYouTubeなどを利用しましょう。

では始めます。
step 1 音声だけ聞く。
意味のまとまりを意識しながら、これ以上聞いても分からないというところまで聞いてみましょう。
step 2
スクリプトを見て聞く。
To be honest, I’m interested in going to Jim’s Halloween party.
聞き取れなかったところはありましたか?もしあればそこに印をつけましょう。
step 3
スクリプトを見ながら音読をする。
音声を再生し、英語の語順どうりに意味を理解しながら丁寧にリピートしましょう。スピードはゆっくりでも大丈夫です。余裕が出てきたら発音やイントネーションにも気をつけましょう。
step 4
スクリプトを見ながらシャドーイングをする。
To be honestまで聞こえたら追いかけるように声に出して読みましょう。耳を集中させ、意味を理解しながら何度もやってみましょう。
step 5
音声だけで音読をする。
音声を再生し、顔を上げリピートします。音声を忠実に再現するようにやってみましょう。
step 6
音声だけでシャドーイングをする。
スピードも同じくらいになるまでやりましょう。目の前に相手がいると思って気持ちを込めください。根気よく繰り返してみましょう。
以上です!おつかれさまでした。
初心者こそリスニングに効果あり!正しいシャドーイング まとめ
いかがでしたか?シャドーイングの効果と手順を紹介し、実際にトレーニングの流れを体感していただきました。
手順をまとめるとこのようになります。
- 音声だけで聞いてみる
- スクリプトを見て聞いてみる
- スクリプトを見て音読をする
- スクリプトを見てシャドーイングをする
- 音声だけで音読をする
- 音声だけでシャドーイングをする
英語は毎日の筋トレと同じように積み重ねが大切です。基本は毎日少しずつ。このトレーニングは1日15分あればできるはずですので、まずは2週間ほど続けてみてください。初心者ほど効果がありますので根気よく頑張りましょう!
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リスニングアップには英語の音を理解することが近道です!下の記事では英語の4つ発音について詳しく解説していますのでぜひご覧ください。
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https://hitononayami.com/learning-method/「記事出典:英語学習ひろば」
日頃から「これって英語でなんて言うんだろう?」っていう疑問を持つことが大切なのね!