今回はいつもの英語学習にぜひ取り入れてもらいたいトレーニング方法をご紹介します。
それは「ディクテーション」と呼ばれる方法です。
ディクテート(dictate)とは「書き取らせる」という意味で、聞き取った内容を文字に起こすトレーニングのことです。
このトレーニング方法を続けると、
- リスニング
- 発音
- 語彙力
の各スキルを効果的にアップすることができます。
3つも同時に?!
と思ってしまいますが、もちろん正しいやり方でディクテーションをしないと総合的な効果は期待できません。
そこでこの記事では、そのディクテーションのメリット・デメリット、正しいディクテーションのやり方を初心者の方にも分かりやすく紹介したいと思います。最後にはディクテーションにオススメのサイトやアプリの紹介もしています。
日々の英語学習に、ぜひこのディクテーションを取り入れて、英語力の底上げを図っていきましょう!
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ディクテーションのメリット・デメリット
メリット
ディクテーションをするメリットは3つあります。もっとあるかもしれませんが、ここではこの3つを挙げておきたいと思います。
- 自分の弱点を発見することができる。
- 弱点が分かるので最短で上達が見込める。
- お金があまりかからない。
英語が苦手・・・と思っている人の中には、自分の弱点がイマイチ何かわかっていない人も結構いるはずです。
聞き取れない原因が、発音なのか、語彙なのか、それとも文法なのか、ということが分かれば、その後の勉強方法を正しい方向へと導くことができます。
例えばアメリカ英語では、wanted toは「ウァニットゥ」と発音します。I’ve been abroadなら「アイヴベンナブロー」と聞こえます。「聞いても分からないけど見て読めば分かる」というのは、こういった発音の法則を知らないからです。
また、It’s difficult for her ( )( ) at night.という英文を聞いたとき、2つ目のカッコに入るsleepは聞き取れたけど、その前のカッコが聞き取れないというのは、不定詞(=to+動詞の原形)という中学英語の文法を忘れているからです。
さらに、He finished almost five minutes faster than anyone ( ).という文があったとします。文末にはelseという単語が入るのですが、その単語自体を知らないと、その部分を聞き取ることは不可能になります。
このように、どうして聞き取れなかったのかを分析することによって、自分の弱点がリアルに分かり、その後の英語学習でするべき項目が見えてくるのです。これはディクテーションの最大のメリットと言えるでしょう。
またディクテーションをするのに必要なものは、スクリプト付きの音声と紙、筆記用具だけです。何も特別なものは必要ありません。お財布に優しいので、気軽に始めることができますね。

まさに万能トレーニング方法ってことニャ!
デメリット
メリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。
- 普段の会話でも一語一句聞き取ることに集中しすぎてしまう。
- スクリプト付きの教材を探すのが面倒。
- 集中力がいるので疲れやすい。
ディクテーションは一語一句聞き取って書き起こすというトレーニングです。ただ、このトレーニングをやり過ぎてしまうと、普段の会話でもそのクセを引きずってしまい、一語聞き漏らしただけなのに、その時点で完全に思考停止に陥ってしまうリスクがあります。
また、スクリプト付きの教材をわざわざ用意するのが面倒だと思う人もいるでしょう。
さらに、ディクテーションはかなりの集中力を必要とするので、途中で疲れてしまいトレーニングをやめてしまうというリスクもあります。
もちろんこれらのリスクを回避する方法はちゃんとありますので、それは最後にご紹介したいと思います。
ディクテーションには2種類ある
ディクテーションには2種類あります。
それは、
- 全文聞き取りタイプ
- 穴埋めタイプ
の2つです。
全文聞き取りタイプ
まずは全文聞き取りタイプのディクテーションです。これは全く白紙の状態から一語一句聞き取っていくやり方です。
以下にサンプルを用意したので、紙と筆記用具があれば体験してみてください。単語レベルは英検3級ぐらいです。
やった方はお気づきだと思いますが、この英文の全文を聞き取って、さらに文字に起こしていくという作業はかなりの集中力と労力を要します。
このことから、この全文聞き取りタイプを選ぶ際は、自分の英語レベルよりワンランク下のあまり難しくない教材を選ぶようにした方がいいでしょう。
ちなみに正解は、
You only have about three minutes, so you’d better hurry inside and find some seats first.
でした。
穴埋め式タイプ
もう一つは穴埋めタイプのディクテーションです。流れてくる文の一部はすでに印刷されているので、虫食いになっている箇所だけを聞き取る、というやり方です。
これも以下にサンプルを用意したので体験してみてください。これも単語レベルは英検3級ぐらいです。
This place ( )( ) the Grand Canyon, and it is 446 ( ) long, about ( ) kilometers deep, and up to 29 kilometers ( ).
いかがでしたか?
さっきの全文聞き取り式と比べると、この穴埋め式の方が取り組みやすかったと思います。
ちなみに正解は左から順に、
is called, kilometers, 1.6, wide
でした。
ディクテーションのやり方
ではここからはさっそく初心者でもできるディクテーションのやり方を詳しくみていきたいと思います。今回は全文聞き取りタイプを例にして進めていきます。
教材のレベルは自分に合ったものを選びましょう。知らない単語が2割ぐらい含んでいるレベルがちょうどいいと思います。
教材を用意できたら取るべきステップは4つです。
Step 1 音声を聞く
まず音声を聞いてみましょう。
ここで聞くときのポイントがあります。
- 一文を最後まで止めずに流す。
- 聞こえた箇所から書き取っていく。
- 音声は5回ほど聞く。
まず、音声は文の最後まで止めずに流してください。これは文全体の意味を見失わないためです。また文全体を眺めてみてみると、「多分ここにはあの単語が入りそうな気がする」といった予測を立てることもできるからです。
また書き起こす時は、聞こえたところからピックアップして書いていくようにしましょう。たとえ文になっていなくても大丈夫です。できれば名詞、動詞など、文のキーとなる情報に全神経を集中させましょう。またスペルは気にする必要はありません。
音声は一度きりではなく数回聞きましょう。そして、何回か聞いて聞こえた単語をどんどん書き足していきましょう。そして3〜5回ほど聞いて、もうこれ以上は聞き取れないというところで終了です。それ以上やっても意味はありません。
では英文を聞いてやってみましょう。
Step 2 弱点を分析
さあどのくらい聞き取れたでしょうか?
ではスクリプトを見てください。10語ありました。
Karen can play the piano as well as her mother.
このステップ2でやることは「弱点を分析」することです。自分が聞き取れなかったところはどこだったのかを確認して、聞き取れなかった箇所ごとにその原因を分析してみましょう。多くは発音、語彙、文法のどれかに当てはまります。
Karen
→ 発音が原因。女性の名前である「カレン」は英語で「キャレン」と発音する。
can
→ 発音と文法が原因。canは強調する必要がない場合はほとんど「クン」に近い音で発音される。
play
→ 文法と語彙が原因。pianoに相応する動詞はplayである。助動詞canのあとは動詞の原型がくる。
the
→ 文法と発音が原因。楽器にはtheがつく。冠詞はふつう強調されずに弱く発音される。
as well as
→ 文法と語彙が原因。as well as 〜で「〜と同じくらい上手に」という意味。
her
→ 発音が原因。代名詞は強調する必要がない場合は弱く発音される。
分析ができたらStep 2は終了です。
Step 3 声に出して練習
次はStep 3です。Step 3では音読をします。
ディクテーションは、書いて見て終わりではありません。ぜひその文を声に出して練習してください。目標は音声とシンクロできるくらい流暢にできることですが、最初はゆっくりで構いません。強く発音するところ、弱く発音するところを意識しながら、聞き取れなかったところを重点的に繰り返し練習しましょう。
“ Karen can play the piano as well as her mother. ”
何度も音声とリピートを繰り返して自分の納得できるレベルになれば、Step 3は終了です。
Step 4 期間を置いてリトライ
いよいよ最後のStepです。Step 4では、2〜5日経ってから同じ音声を使ってもう一度ディクテーションをします。期間を置く理由は、記憶を定着させるためです。ご存知のとおり、人の記憶というものは一回だけでは定着しません。
下のグラフを見てください。これは、人の記憶に関して、カナダにあるウォータールー大学(The University of Waterloo)が公表している研究結果です。
1時間の講義を聞いた学生の記憶の状態をグラフで表しています。黒色の曲線は講義を聞いてからも特に何もしない場合、オレンジ色の曲線は何度か復習をした場合です。

これによると、講義を受けたばかりの1日目は内容の100%の記憶を保っていますが、そこから何もしないでおくと2日目にはその記憶は50%〜80%減少してしまいます。それは日々いろんな情報を取り入れている脳が、ふたたび呼び起こされることのない情報を必要ないものとして排除するからです。
ところが、一度やったことをちゃんと復習した時というのは、脳が「お!また来たぞ!じゃあ残しておこう」という反応を起こし、記憶として長くとどまることがわかりました。しかも復習は次の日に10分程度やるだけで、ほぼ100%まで回復しています。
さらに驚くことに、その後の復習にはたった数分かけるだけで、長期間にわたって記憶が定着していることがわかります。
ディクテーションのリトライが面倒だと思った方は、ぜひこの研究結果を思い出してディクテーションのリトライをやって見ましょう。

よーく分かったニャ!
ディクテーションを続けるためのコツ
ディクテーションにはデメリットもあると前半でお伝えしました。それが次の3つです。
- 普段の会話でも一語一句聞き取ることに集中しすぎてしまう。
- スクリプト付きの教材を探すのが面倒。
- 集中力がいるので疲れやすい。
①については、音声を聞き取る際は文の最後まで音声を止めないということが重要になります。
一語一句に集中するのではなく、文全体の意味をとらえる気持ちで聞いてみましょう。そうすることで、次にくる語を推測する力も養うことができます。これはリスニングだけでなく、リーディングや会話においてもとても大切な力です。一語一句聞き取るのは数回聞いた後でも大丈夫です。
②についてですが、スクリプト付きの音声がないという人でも、今は簡単に入手できる時代になりました。
例えば英検の公式ページには過去問のリスニング問題とそのスクリプトが公開されています。また、無料でディクテーションができるサイトやアプリもあります。
以下に初心者の方へのおすすめを載せました。
- 英語リスニング無料学習館(サイト・アプリ)
- スタディサプリ(アプリ)
- 英検公式サイト(サイト)
教材選びが面倒だという方はぜひチェックしてみてください!
誰でもできるディクテーション:まとめ
いかがでしたか?今からでもディクテーションを始めたいと思った人はすぐ行動に移してみましょう。
やり方は次のとおりでした。
- 音声を聞く
- 弱点を分析
- 声に出して練習
- 期間を置いてリトライ
継続は力なり。まずは1ヶ月続けてみましょう!
シャードイングも力が付きます。下の記事も併せてご覧ください↓
なんか聞いたことあるニャ。